和音とは何か 三和音の仕組みから音楽の縦の構造を学ぶ

音楽理論の基礎構造

音楽を聴いているときに、まず意識が向くのは旋律の流れですが、さらにその旋律に複数の音が同時に重なることで、曲の土台になる響きが生まれます。その中心にあるのが和音です。

和音は、どの音をどの間隔で重ねるかによって、響きの性格や役割が大きく変わります。和音がわかると、曲を支えている仕組みや、どこで落ち着き、どこで緊張が生まれるのかも見えてきます。

この記事では、和音の基本的な考え方を整理しながら、三和音についてその仕組みと意味を見ていきます。実際に鍵盤で確かめながら読むと、理解しやすいと思います。

和音とは何か

和音は複数の音が同時に鳴ることで生まれる

和音とは、二つ以上の音が同時に鳴ってできる響きです。単音では一つの響きしかありませんが、和音になると音と音の関係が生まれます。その関係によって、落ち着いた響き、張りつめた響き、少し不安定な響きなどの違いが出てきます。

和音はどの音をどう重ねるかで性格が変わります。ドとミとソを同時に鳴らしたときの響きと、ドとファ♯とシを同時に鳴らしたときの響きは、明らかに性格が違います。和音は、音の数だけではなく、音程の組み合わせによって成り立っています。

和音は曲の土台になる響きを作る

メロディーが横の流れを作るのに対して、和音は曲の土台ともなる響きを作ります。ピアノでは右手が旋律を弾き、左手が和音でそれを支えるという場面が多くありますが、これは横の流れと縦の構造が同時に働いている例としてわかりやすいかと思います。

和音があることで、旋律がどの調の中にあり、どこへ向かっていて、どこで落ち着こうとしているのかがはっきりしてきます。

三和音とは何か

三つの音を一定の規則にしたがい重ねた和音

三和音は、三つの音を一定の規則にしたがって重ねた和音で、西洋音楽の基礎になっています。たとえばドを土台にして、その上にミ、さらにその上にソを重ねると、ド・ミ・ソの三和音ができます。

三和音はシンプルな構造ですが、長調と短調の響きの違い、安定と緊張の作られ方、調の中心感の捉え方など、多くの内容につながっています。

三和音を構成する三つの音には、それぞれ名前がある

三和音を考えるときは、三つの音を区別して見ます。

いちばん下にある音を根音、その上にある音を第三音、さらにその上にある音を第五音と呼びます。

たとえばド・ミ・ソであれば、

  • ドが根音
  • ミが第三音
  • ソが第五音

です。

ここでの「第三」「第五」は、鍵盤の数ではなく、音階の中で数えた位置を表しています。ドからミまでは三度、ドからソまでは五度の関係になるため、この名前が付いています。三和音は、この根音・第三音・第五音の関係でできています。

三和音の種類

長三和音

長三和音は、根音から第三音までが長三度、根音から第五音までが完全五度になる和音です。
ド・ミ・ソがその代表で、Cの和音として扱われます。

この和音は、安定感のある開いた響きとされています。長調の中心になる和音として現れることが多く、曲の土台として使われます。明るいという言い方で説明されることが多いですが、まずは響きが整っていて、重心が安定している和音として捉えるとわかりやすいです。

短三和音

短三和音は、根音から第三音までが短三度、根音から第五音までが完全五度になる和音です。
たとえばラ・ド・ミは短三和音で、Amの和音になります。

長三和音と比べると、響きに陰影が加わります。第三音の位置が変わるため、和音全体の重心の感じ方にも違いが生まれます。短調の音楽だけでなく、長調の中でも重要な役割を持つことがあります。

減三和音

減三和音は、根音から第三音までが短三度、根音から第五音までが減五度になる和音です。
たとえばシ・レ・ファは、ハ長調の中で自然にできる減三和音です。

この和音は、長三和音や短三和音に比べると不安定に聞こえます。落ち着いた終わり方よりも、別の和音へ進もうとする力が強く感じられます。そのため、経過的な役割や、緊張を高める場面で重要になります。

増三和音

増三和音は、根音から第三音までが長三度、根音から第五音までが増五度になる和音です。
基礎の段階では、長三和音や短三和音ほど頻繁には扱いません。ただ、和音の種類としては押さえておきたいものです。

根音から第五音までの幅が広がるため、長三和音より落ち着きにくい響きになります。最初の学習では深入りしなくてもよいですが、三和音にはこうした種類の違いがあることは知っておくとよいと思います。

三和音はどのように作るのか

音階の音を一つおきに積む

三和音を作る基本は、音階の音を一つおきに積むことです。
たとえばハ長調の音階、ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シを使ってみると、

  • ド・ミ・ソ
  • レ・ファ・ラ
  • ミ・ソ・シ
  • ファ・ラ・ド
  • ソ・シ・レ
  • ラ・ド・ミ
  • シ・レ・ファ

という七つの三和音ができます。

これは、ハ長調のダイアトニックコードとしてよく出てくるものです。すべての和音が同じ種類ではなく、長三和音、短三和音、減三和音が並びます。この並び方を知ると、ある調の中でどの和音が自然に生まれるのかがわかります。

調が変わると和音の並びも移る

ハ長調でド・ミ・ソができるなら、ト長調ではソ・シ・レが主和音になります。
つまり、三和音の考え方そのものは同じでも、調が変われば音の実際の位置は変わります。

このとき大事なのは、和音を鍵盤の形だけで覚えないことです。どの調でも、根音・第三音・第五音という仕組みは同じです。そのため、鍵盤の位置だけで覚えるより、音の関係として理解しておくほうが役立ちます。
和音を移調したり、楽曲の中で調の変化を追ったりするときには、この見方がとても大切になります。

三和音は曲の中でどんな役割を持つのか

主和音・下属和音・属和音の土台になる

長調や短調の音楽では、三和音の中でも特に重要なものがあります。
それが主和音、下属和音、属和音です。

ハ長調であれば、

  • 主和音は C(ド・ミ・ソ)
  • 下属和音は F(ファ・ラ・ド)
  • 属和音は G(ソ・シ・レ)

です。

この三つは、調の中心感や進行の方向を作るうえで大きな役割を持っています。主和音は落ち着く場所、属和音は先へ進みたがる緊張を持つ場所です。下属和音は、主和音から属和音へ向かう流れを広げる役割を持ちます。
和声の学習に進むと、この三つの関係がとても重要になりますが、その土台にあるのが三和音です。

終止感にも深く関わる

終止が落ち着いて聞こえるのは、属和音から主和音へ進む流れがあるためです。
GからCへ進むと収まるように感じるのは、単にコード名を覚えているからではなく、和音の中に含まれる音が主音へ向かう働きを持っているからです。たとえばソ・シ・レの中のシは、ドへ進むと落ち着きやすく、そうした動きが終止感を支えています。

この意味で、三和音を知ることは終止を知ることにもつながっています。和音の構造がわかると、曲のどこで落ち着き、どこで緊張しているのかも少しずつ読み取りやすくなります。

和音は同じ音でも並び方で見え方が変わる

根音がいちばん下にある形が基本形

ド・ミ・ソのように、根音がいちばん下にある形を基本形と考えます。
この形では、和音の基本的な性格が最もわかりやすく表れます。

曲の中では、必ずしもこの形ばかりが使われるわけではありません。ですが、まずは基本形で和音の種類を見分けることができないと、その後の転回形の理解が難しくなります。三和音を学ぶ最初の段階では、基本形をしっかり押さえるのが大切です。

転回形になると響きの重心が変わる

同じド・ミ・ソでも、ミ・ソ・ドやソ・ド・ミのように並び替えることができます。
こうした形を転回形と呼びます。

転回しても、和音を構成している音そのものは変わりません。ですが、どの音が低音に来るかによって、響きの重心や安定感の出方は変わります。
そのため、和音は「どの音を含んでいるか」だけでなく、「どう並んでいるか」も大切です。まずは三和音の基本形を理解したうえで、そのあとに転回形を学ぶほうが、順序として無理がありません。

演奏者にとって和音を理解する意味

左手の役割がわかる

ピアノを弾いていると、左手を伴奏としてだけ捉えてしまうことがあります。ですが、左手が弾いている和音の意味がわかると、伴奏ではなく曲の支えとして捉えられるようになります。
どの和音に乗っているのかがわかると、旋律との関係もかなりはっきりします。

右手だけを追っていたときには気づきにくかった曲の流れがわかることがあります。こうした見方は、譜読みや暗譜にも役立ちます。

音のまとまりで覚えられる

一音ずつ覚えるよりも、ド・ミ・ソというひとかたまりで捉えたほうが、音どうしの関係も含めて覚えられます。
和音が見えていると、どこで主和音に戻るのか、どこで属和音が出てくるのかがわかるため、曲を構造として捉えながら覚えられます。

和音の理解は、理論のためだけではありません。演奏するときに、今どの場所にいるのかを把握する手助けにもなります。

和音を学ぶと次に何が見えてくるか

三和音を理解すると、次に見えてくるのは和声の流れです。
どの和音が中心で、どの和音が緊張を作り、どの和音が流れをつないでいるのかが少しずつわかってきます。

さらに、終止、転回形、機能和声、楽曲分析へとつながっていきます。
実際の曲の中では、和音は単独で存在するのではなく、前後の和音との関係の中で意味を持ちます。三和音はその最初の入口です。

おわりに

和音とは、複数の音が同時に鳴ることで生まれる響きであり、音楽の縦の構造を支えるものです。その中でも三和音は、調性にもとづく西洋音楽を理解するうえで重要な位置を持っています。

根音・第三音・第五音の仕組みがわかると、長三和音や短三和音の違い、主和音や属和音の意味、どのように終止感が生まれるのかまで少しずつつながってきます。
旋律の下でどのような和音が働いているかを知るためにも、まずは三和音の考え方をしっかり押さえておくのがよいと思います。

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